〔メルマガより〕慶應SFC前期授業を終えて
posted on 2009年7月31日 02:46
広石です。
今年から、慶應義塾大学SFCで学部生に「ソーシャル・ビジネス・
プランニング」の授業を担当しています。
社会起業プランニングは02年から、もう7年やっていて多くの学生も
受講してくれていますし、例えば東北大学大学院での集中講義なども
担当させていただいているのですが、学部の授業で受講する人って、
どんな学生たちかな?と思っていました。
ただ、4月の1回目、イントロダクションとしてグラミンバンクを
紹介するビデオを見てもらい、受講選抜のエッセイを書いてもらった時、
予想は良い意味で裏切られました。
例えば1年生の学生にとって、グラミン・バンクは英語の教科書で、
読んだ事例だったりします。SFCには金子郁容先生や井上英之先生
もいるので、2年生ともなるとKivaのことを普通に知っていたりします。
ある1年生(高校卒業して入学したばかり)のエッセイでは
「私は高校時代に、NGOのスタディ・ツアーで東南アジアの貧困に
出会い、ショックを受けました。そして何かしたい!と思って、高校で
みんなで議論したのだけど、結局、赤十字などへの寄付しかできない
ことが残念でした。そんな時、SFCでは社会起業家のことを教えて
もらえると聞いてSFCに進学しました。だから、私にとって、先生の
授業はとらないといけない授業なのです」
と書いてくれていました。
1、2年生のエッセイは、全体的にそういう雰囲気です。
もちろん、「今日見た銀行のこと初めて知ったが、もっと広げるべき」
といった学生もいます。
しかし、共通しているのは、もはや彼らにとって、社会かビジネスかは
対立項ではなく、ごく普通に一緒になっているものなんだということです。
この1回目の授業が終わった時、「これは、きちんと教えないといけない」
と強く感じました。
「グラミン・バンクが貧しい人を救った」といったレベルの話だと相手に
されない。何がポイントで、どうすれば自分たちに応用できるのかまで、
きちんと話をしていかないといけない世代なんだな、と感じました。
もちろんSFCなので同世代でも意識の高い学生が多いかもしれないの
ですが、しかし目の前に1、2の特殊例ではなく、数十人いることは、
かなり意識は広がっていることを、彼らから教えてもらいました。
授業は最初3回講義で、7回ワーク、2回最終発表なのですが、
ワークの中で、自分のテーマを探し、先行事例を調査し、チームを組み、
プランをつくるというプロセスを、ある意味、普通に進めていき、そして
最後の発表会2回で、都市農村交流や人材活用、途上国支援などの
事業プランを発表してくれました。
いずれのプランも、数年前なら、社会起業家コンテストの最終審査に残る
くらいのレベルのものです。
僕が授業で何度も言うからかもしれませんが、各テーマで困難な状況に
ある人の潜在的な力を引き出すことに焦点を当てた、いいプランです。
それを、授業のプロセスの中で作っていってしまうこと。
問題意識やテーマはある。しかし、妙に高い志とか、苦悩とかなくって、
ある意味「普通に」つくれてしまう。
僕は、そのことに希望を感じました。
社会起業というものが、何か特別な、風変わりなものだと扱われている
限り、それは広がらないでしょう。
でも平成生まれの彼らの時代、ビジネスの一つの形として社会起業は
「普通」にある。だから、「普通の人」にも広がっていく可能性は、
どんどんと高くなっていく。
現状の社会起業は「変わったもの」として、やっていること自体を
ほめたり、動機とか原体験とか、熱さとかに注目が集まりがちです。
しかし彼らの時代、普通の事業の一つとなれば、
焦点は「成果を上げたか」に自然に定まっていくでしょう。
彼らを見ていると、確かにそういう時代が来るのだと実感できます。
変わらないといけない、育っていかないといけないのは、僕らの方でしょう。
※授業のプラン発表会の2回、コメンテーターとして手伝ってくれた
諏訪玲子さんが、コラムを書いてくれています。
どんな内容の発表があったのか、また、数年前まで学生だった彼女が
今の学生をどのように見たのか、とても興味深いものです。
http://nez-studio.jp/blog/cat18/sfc.html

